■TLセッティングデータ
ようこそ!
このページでは筆者のTL-1000Rのサスペンション・セッティングを公開しています。
項目ごとにリンクを作っていますので、上から順にでも好きな所をツマミ読みでもご自由にどうぞ。
蛇足ですが・・・このページを含め、各コンテンツは筆者の主観に基づいて書かれております。
絶対的な論理、根拠などが根底にある訳ではないのであしからず。
■自分の持っている不満・弱点を見つける
■セッティングシート記号の意味
■TL-1000R〜セッティングシート [UP]
■セッティングの分析
不満・弱点を見つける
筆者の場合、実はこれが一番難しいことだったかも知れません。
理由は大きく分けて二つありました。
1「不満があってもそれは自分のテクニックが未熟だからだ、と考える」
2「愛車はとても良く走るので、これと言った不満が見つからない」
筆者がTL-1000Rに乗り始めた頃は住む土地を移ったばかりで、一緒に走りに出る仲間(相対目標)もいなければ、腕の方も始めて乗る大型バイクのパワーをもてあますばかり、という状態だったのでうまく走れているのかいないのか全く暗中模索でした。
こうした場合、どういう策が有効なのか。
筆者の出した結論は、
「行きつけの峠を見つける」
要は決まった所を往復して、その日の調子やスピードを自分なりに評価できる場所を見つけるのです。
また、場所でなくても
一緒に走る相手を見つけるのも自己評価に有効な手段といえます。
筆者の場合、とある道路を往復すること半年程度、ある日通りかかったライダーに「自分達のツーリングに参加しないか?」と声をかけてもらうという幸運な展開で相対目標を手に入れてしまいました。
その後、自分よりも早い相手に一生懸命食らいついていくツーリングを繰り返す内に
「この圧倒的なキャリアの差を埋めるにはモノに頼るしかない!」
と考えるようになり、フロントフォークをチューンし、リアサスペンションをオーリンズに換え、修行とセッティングにいそしむようになった・・・と書いてみると典型的な小僧ですな、こりゃ。
さて、思い出話はこの辺にして本題に。
筆者の行きつけの峠は中・低速主体のコースで直角に曲がるようなコーナーが多い所でした。
そのため、前述のツーリングに出るようになって始めて「自分は低速・高速コーナーのどちらでも、特に
曲がっている時間が長い所で特に遅い」という事実に気付きました。
すなわち、
弱点を見つけたのです。
もちろんライテク本を読んで、何とかうまく曲がれないかと練習もしましたが「モノに頼る」というマニュフェストを掲げている筆者がセッティングに熱を上げない訳がありません。
ということで、このページにて公開しているセッティングシートはいわゆる「向き変え」後のコーナリング、
二次旋回を高めることを第一義としています。
セッティングシート記号の意味
これはフロントスプリングの与圧位置(イニシャル)を示しています。
この値が大きいほどスプリングの与圧が低く、車体姿勢は前下がり傾向となります。
TL-1000Rでは1段〜8段までの調整が可能で、5段が標準位置です。
これはフロントの伸び側減衰力の調整値を示しています。
伸び側(及び他の)減衰力の強弱は、最強(調整ねじを一杯まで締め込んだ状態)から何クリック(クリック式でなければ何回転)調整ねじを戻したのかで表現します。
この値が大きいほどフロントフォークの伸び側減衰力が弱く、加速時など車体姿勢が前上がり方向に動く際のスピードが速く、動きが大きくなります。
また、伸び側減衰は圧縮側減衰にも影響します。伸び側減衰力を弱めると圧縮側減衰の調整ねじを操作していなくても、圧縮側の減衰力が若干弱くなります。
TL-1000Rでは最強〜12クリック戻しまでの調整が可能で、8クリック戻しが標準位置です。
これはフロントの圧縮側減衰力の調整値を示しています。
圧縮側減衰力の強弱も最強から何クリック調整ねじを戻したのかで表現します。
この値が大きいほどフロントフォークの圧縮側減衰力が弱く、減速などによる車体姿勢の前下がり方向への動きが速く、大きくなります。
TL-1000Rでは最強〜12クリック戻しまでの調整が可能で、7クリック戻しが標準位置です。
これはリアスプリングの与圧位置(イニシャル)を示しています。
筆者のTL-1000Rはリアサスペンションがオーリンズ製に交換されていますが、調整値はサスペンションの出荷状態(メーカー推奨位置)から調整ナットを何回転締め込んだのかで表現します。
(+1rev = 一回転締め)
この値が大きいほどスプリングの与圧は高く、車体姿勢が前下がり傾向となります。
TL-1000R用のオーリンズは出荷状態で12mmの与圧がかけられています。
これはリアの伸び側減衰力の調整値を示しています。
他の減衰力と同じく、最強から何クリック調整ねじを戻したのかで表現します。
この値が大きいほどリアサスペンションの伸び側減衰力が弱い事になります。
また、リアの伸び側減衰もフロントと同様に圧縮側減衰に影響します。
TL-1000R用のオーリンズは13クリック戻しの状態で出荷されています。
これはリアの圧縮側減衰力の調整値を示しています。
他の減衰力と同じく、最強から何クリック調整ねじを戻したのかで表現します。
この値が大きいほどリアサスペンションの圧縮側減衰力が弱い事になります。
TL-1000R用のオーリンズは10クリック戻しの状態で出荷されています。
TLセッティングシート
■セッティング内容をご覧になる前に〜
前述の通り、筆者のTL-1000Rはフロントフォークがスクーデリア・オクムラにてMEチューンされ、リアサスはオーリンズに交換されています。MEチューンによって変更された仕様は以下の通りです。
| 項目 |
現在値 |
標準値 |
| フォーク突き出し量 |
10.0mm |
6.5mm |
| スプリングレート |
0.95kgf/mm |
- |
| フォークオイルレベル |
130mm |
95mm |
| フォークオイル銘柄 |
MOTUL Light 2.5-5W |
L01 |
| タイヤサイズ |
120/70 190/55 |
120/70 190/50 |
1「セッティング開始前」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 5段 | 9戻 | 5戻 |
0rev | 13戻 | 10戻 |
フロントはスクーデリア・オクムラから受け取った状態のまま、リアはオーリンズの出荷状態でのセッティングです。
特に不満はなく、MEチューンの効果に大満足でした。
しかし乗り込んでいく内に、バンクしている時間が長いシチュエーションでは、アクセルを開けていくとアウトにふくらみ、パーシャルないしエンジンブレーキを残した状態ではフロントの接地感に不安を感じるようになってきました。
2「スクーデリアオクムラに助けを求める」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 5段 | 9戻 | 3戻 |
0rev | 16戻 | 10戻 |
「回り込んだコーナーがうまく曲がれません」
スクーデリア・オクムラにて相談した所「二次旋回が不足しているのなら・・・」と左表の様に調整してくれました。
曰く、フロントへの加重を増やし、コーナー進入で前下がりの姿勢を作るのが目的との事。
しかし翌週末に感触を試しに出てみるも、変化はあったが二次旋回は改善されていないように感じる。
3「自分なりにいじってみる」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 5段 | 9戻 | 4戻 |
0rev | 15戻 | 7戻 |
前回行った変更を半分ほど元に戻した上で、自分なりの調整を試みる。
結局、リア圧側を3クリック締め込んだ所でまずまず違和感のない状態となったが、相変わらず改善と呼べるほどの効果は見られない。
4「再度、相談する」
Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
6段 | 7戻 | 4戻 |
0rev | 15戻 | 7戻 |
再度スクーデリア・オクムラにて二次旋回の件を相談。
フロント伸側を締め、イニシャルを抜く事を推奨される。
今度はフロントにかかった加重を抜け難くする方向を試してみようとの事。
フロント伸側を締め込んでみるとフロントの接地感が大きく改善したが、今度は減速時にフロントが高い感じでブレーキリリースで向きを変え難くなってしまった。
フロントが高い感じを解消するべくイニシャルを一段抜いてみるも効果は今ひとつ。
さらに抜くと不安定で乗れたものではなかった。
5「フロントが下がらない」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 6段 | 6戻 | 5戻 |
0rev | 15戻 | 7戻 |
せっかくフロントの接地感が高まって長いコーナーでも不安を感じ難くなったというのになぜブレーキングで望みの高さまでフロントが沈み込まないのか・・・。
ある日、その疑問に答える文章をRC誌に見出す。
「伸び側減衰の機構は圧縮側にも影響する」
そうか! と早速フロントの圧側を緩めてみると、これが大正解。
前輪の接地感はそのままに、向き変えもし易くなった。
さらにフロントの減衰をいじってみると、伸側をさらに1クリック締め込んだ位置で最も良い感触が得られた。
6「次はリア。一念発起のプリロード調整」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 6段 | 6戻 | 5戻 |
+2rev | 17戻 | 7戻 |
ここまでフロント加重を増やす方向が良い結果を生んでいるので、次はリア周りをいじって更なる改善を試みよう!
という訳で、大変そうなので敬遠していたリアのプリロード調整を行うことに。
どのくらいいじって良いのか分からないので、以前オーリンズ付きのTLに乗っていたSBSのメカの方に相談。
まずは二回転締め位いにしといたら?体重軽いんだし。
ということで早朝に近所迷惑も顧みずセッティング実施。
いつものコースを走ってみると実に具合が良い。
しかし、だんだんとリアの突き上げがきついと感じるようになってきたので、リア伸側を緩めてみる。
開け始めのトラクションが少し希薄なものの、長く曲がっていてもフロントの接地感が消えず、アウトにはらみ難いので以前よりもかなり楽
に走れるようになった。
7「全体的に硬くしてみたら」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 6段 | 5戻 | 3戻 |
+2rev | 11戻 | 2戻 |
前回までの変更ですっかり満足していたが、ここに来て我がTLに一大変革が起こった。
それは「アルミ鍛造ホイールの装着」。
その効果は絶大で「走る」「曲がる」「止まる」のすべてが向上した。
よくある表現だが、これ以上なんとも言いようがない。
ところで、よく巷では「ホイールが軽くなったらセッティングをやり直す」と言われているようなのだけど、現状に満足していた自分は新しい方向性を見出せないでいた。
そんな折、BM誌に「バネ頼りのセッティングを減衰中心にすると乗り易く接地感豊かな乗り味になる」との一文が。
それはいいことを聞いたとばかりに、傾向を探るべく各減衰を全体的に硬くして乗ってみる。
気になる結果は・・・あまりよくありませんでした。
BM誌にあった「減衰を上げると車体の動きが重く感じられる」症状はホイールのおかげかあまり感じられなかったのに、またも二次旋回の不足が起きてしまった。
8「リアはもとに戻してフロントを調整」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 6段 | 4戻 | 5戻 |
+2rev | 17戻 | 6戻 |
全体的に硬くして方向性を見失ってしまったので、リアのセッティングは「6」の状態に戻してフロントのみ調整。
前回の調整であまり硬くしていなかったフロント伸側を締め、残ストロークを見ながら圧側減衰を調整していくと2クリック緩めたところでよい感触に。
どうやらフロント圧側を硬くし過ぎていたためにフロントへ充分加重できていなかった模様。
そのままいったりきたりしているとアクセルを開け始めた時の振られが大きく、トラクションがかかるまでに良くない間を感じるようになったのでリア圧側を調整。
1クリック締めと2クリック締めのどちらにするか悩んだが、後者は下りでピッチングの動きが良くない感じだったので、1クリック締めで手を打つことにした。
フロントの接地感が消えにくく、アクセルを開ければ荷重がリアに移って旋回状態を維持しやすい。
9「さらにリアをアップ」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 6段 | 4戻 | 5戻 |
+3rev | 17戻 | 6戻 |
自分は体重がさほどないので、リアのイニシャルを高めると路面からの突き上げがひどくなったり、充分なピッチングが起きなくなったりするのではないかと不安に思っていた。
しかし、これまでセッティングを進めてきた過程で充分にリアの動きを感じることができていたので、更なるリアの車高アップ→フロント荷重の増加を図ることに。
イニシャルを高めて乗車時の姿勢を変更するのではなく、できれば車高を直接調整したのだけれど、TL-R用のオーリンズはそれができない。
イニシャルを増やして走ってみると、家の近くで左折小回りしただけで効果が分かるほど曲がり易くなった。
10「リアを柔らかくして乗り易く」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 6段 | 4戻 | 4戻 |
+2.5rev | 19戻 | 6戻 |
狙いはタイトルの通りだが、結論から言うと失敗。
まだ寒い頃のシーズンイン。どうもうまく乗れないこんな時は・・・とリア伸側を緩めてみた。
そのままだと前に荷重がかかりすぎてブレーキが強くかけられないのでフロント圧側を1つ締めた。
で、その時は確かに乗り易いと感じたのに、身体が慣れてきた8月のツーリングではプッシュアンダーが強くて立ち上がりで開けられない。
どうやらフロントの荷重が増す事と、アンチスクワットが強くなる事の関係が、差し引きマイナスの範囲に入ったようだ。
11「R伸を硬くする方向で出直し」
Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
8段 | 4戻 | 7戻 |
+3rev | 14戻 | 7戻 |
前回の失敗から、
「車体姿勢はそのままにアンチスクワットを弱めれば、旋回時間が長い場合にも接地感が損なわれ難いはず」
と考えた自分は「フォーク突き出し量を増やそう」とした。
リア伸を締めるか、イニシャルを抜くかしてプッシュアンダーを抑制する。それによって車体姿勢が変わらないようにフロントも下げようという理屈だ。
だがSBSでフロントのイニシャルでの調整を勧められる。
そこで左表のように変更した所、進入に違和感無く、立ち上がりでアクセルを開けてもアウトにはらみ難くなった。
フロントの減衰がリアと比べて硬いので、F伸を緩めてもみたがブレーキ・旋回共に感触は悪くなってしまった。
12「60,000km振りのフォークOH」
Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
7段 | 6戻 | 10戻 |
+3rev | 14戻 | 7戻 |
ショップの人も困惑気味の乗りっ放しフォークは相当減衰発生に支障をきたしていたようで、OH前のセッティングでショップを出ると強すぎるコシに少々戸惑った。
そこでフロントをオクムラ推奨セッティングに変更。
そのセッティングを示された筆者は内心「そんなに減衰を抜いていいのか?」と思ったが、結果はすこぶる良好。
突き上げが緩くピッチングを感じ取れるのでフワフワなのかと言うと、不思議な事に残ストロークは増えている。
クオリファイヤーに履き替えてから、久しぶりにフロントの接地感を気にせずに走ることができた。
13「α10、リアには190/55」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 7段 | 6戻 | 10戻 |
+3rev | 13戻 | 7戻 |
以前、突き出し増加を断念した際に考えていたもう一つの施策「リアのタイヤサイズ変更」を実行に移した。
標準サイズよりも約20mm径の大きな190/55を採用し、銘柄もハイグリップのα10に変更。
狙いはフロントのイニシャルを落としたのと同じで、前傾を保ったままでのアンチスクワット抑制。
α10のグリップが一番功奏しているのだと思うが、それだけでない事がはっきりと感じられる。
クリッピングからパワーをかけると、リアがどっしりと落ち着いて旋回力が湧き上がってくる感じで、とても開け易い。
これはアンチスクワットの減少と、背高なタイヤの変形が生む「ねじれ方向の柔軟性」による効果だと思われる。
セッティングの分析
さて、前述の「TLセッティングシート」にて筆者の歩んできた道を見ていただきましたが、ここではそのスタートと最新版を比較し、どういった傾向が筆者の好みに合っていたのかを考察してみたいと思います。
1「セッティング開始前」
| Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
| 5段 | 9戻 | 5戻 |
0rev | 13戻 | 10戻 |
13「現時点のベスト」
Fイニ | F伸 | F圧 |
Rイニ | R伸 | R圧 |
7段 | 6戻 | 10戻 |
+3rev | 13戻 | 7戻 |
スタートの状態からみるとほぼ一変しています。
両者の違いを見比べてみると一目ではっきりとした傾向を見出すことができます。
それは「フロント荷重の増加」です。
TL-1000Rに限らず、世の走行性能を追っている横置きV-twinマシンには車体バランスにおいて共通の傾向(欠点?)があります。
1:前輪分布荷重が不足する
2:重心の位置が高くなる
3:ジャイロ効果が生む安定性に乏しい
「3」についてはそれと引き換えに高い運動性能を得ており、切り返しのようなシチュエーションでは有利、という考え方もありますが、前述の「重心が高い」という前提に立つと、手放しに「安定性の低下=運動性の向上」とは言い切れない面もあります。
そこで
「1」「2」による不利益を最小限に抑えることがセッティングを行う上での命題となります。
それによって
「3」を利点に変え、V-twinの豊かな中速トルクという武器を最大限に活用できる体勢を整えて戦う!・・・これです。
ということで各調整内容をまとめてみると以下のようになります。
■イニシャル
フロントを緩め、リアを締めることで車体姿勢を前下がり・後上がりとしています。
また、アンチスクワットを強めずにリアの車高を上げる為、後輪を190/55サイズとしています。
■伸び側減衰
フロントの伸び側減衰を締めることで一度低くなったフロント周りの位置を長く維持できるようにしています。
プッシュアンダー対策を進める内に、緩めていたリアが出荷状態の値まで戻っていきました。
■圧縮側減衰
フロントは底突きせず、減速時に不安のない範囲で緩め、リアはアクセルを開けた際の荷重移動を阻害しない範囲で締め込んでいます。