某ダムにて

回顧録〜永遠の初心者ライダーのエッセイ

 小さな頃から体育が何より苦手で、趣味は読書と映画鑑賞
 そんな超インドア派OLが、何を思ったか23歳でバイク免許を取得しました
 こちらでは、幾多の立ちゴケを経験しながらも 50ccスクーター、CB125T、
CBR250RR、ディグリー(250ccオフロード)、そしてスズキ・SV1000Sへとステップアップした管理人の、苦労と栄光の軌跡をご紹介しています

ポッキリ

 2004年の4月末、バイクで通勤中に事故に遭いました。
 保険の過失割合は95:5(勿論私は「5」!)であり、警察の調書では私が被害者と認定されました。

 しかし、どう言い訳をしても、結局は事故を起こした人間になんらかの過失はあるのだと思います。
 それがたとえ「過失5」の「被害者」であっても、です。
 
 ま、事故の内容を延々とお話してもあまり楽しくないので、ここでは”骨折した時の生活”なんかを振り返ってみたいと思います。

怪我の状況

 左足首を3箇所骨折(ヒビ)しました。全治3ヶ月です。
 あとは、派手な擦り傷と打ち身だけ。
 事故当時の装備はライディングジャケット(パット入り)、ジーンズ、フルフェイス、ライディンググローブでした。  足にはスニーカーを履いていましたが、もしライディングブーツを履いていたら骨折すらしなかったと思います。
 事故を目撃した人は「(私が)脳をやられたかと思いました。いやなもの見ちゃったなぁ・・・って。」と言ってましたから、
 本当にバイク装備(特にフルフェイス)は偉大だと思いました。  みなさんも、どんなに近距離のライディングでも、バイク装備は欠かさないようにしてくださいね。

その1:一人ぼっちの生活

 その年のGWは、夫の友人達のツーリングに混ぜてもらう計画でした。
 しかし、事故に遭ったのがGW直前のことだったので、私のツーリング計画は全て中止。
 心配して家を離れたがらない夫のお尻を引っぱたいて、ツーリングに送り出しました。バイク乗りの嫁の意地であります。

 で、家に一人になってみてから初めて、京間6畳のリビングでは松葉杖が使えないことに気が付きました!
 椅子やテーブルが邪魔になって、杖をつくスペースが無いからです。
 そもそも、最初の頃は体のあちこちが痛くて、とても杖をついて歩けるような状態ではありませんでした。
 仕方が無いから膝をついてハイハイで移動を試みたのですが、開始後3分で膝が痛み始め、あえなく断念。
 結局、左足を浮かしたまま横座りでズリ這いをする、という情けない移動方法を採っていました。
 あんまり情けなかったので、「コーチ!私、もう立てません!・・・何を言っている!甘えるな!!・・・あぁ!木の葉落とし!!」と一人アタックNo.1ごっこをして心を慰めながら、移動をしていました。
 一番大変だったのはトイレですけどね。和式でなくてほんとに良かったッ
 痛みが治まってきてからは、ケンケン(片足で跳ぶ)が主要な移動手段でした。
 ズリ這い移動の5倍速くらい!歩行生物の移動速度に感動しました。

 ところが、この移動手段には大きな欠点があったのです。
 食べ物が運べない!!
 優しい夫が「調理をしなくてもいいように」とカップ麺を買い込んでくれていたのですが、お湯が注がれたあつあつの汁物をリビングへと運ぶ手段が無いのです。
 大ぴんーーち!

 のびてゆく麺とにらみ合うこと5分…

 そっか!運ばなければいいのか!
 とヒラメキ、結局、食事はほとんどキッチンですませました。
 当時我が家にはポットという文明の利器もなかったので、お湯を沸かしたら、そのままコンロの上にカップ麺をおいて立ち食いするしかありませんでした。  足を負傷したくらいなによ!手が使えるからいいじゃない!
 と思っていましたが、実際に経験すると、結構不便なもんでした。
 次に骨折して一人暮らしするときは、バナナを箱買いしようと思います。

その2:眠れません!

 「一人ぼっちの生活」の続きです。
 食事、トイレに続いて困ったのが「お風呂」、そして「睡眠」です。
 事故の翌日(一人暮らし初日)は、シャワーの蛇口をひねるだけで10分以上かかりました。
 悪戦苦闘した結果後頭部から転倒するというハプニングもあり、あやうく全裸で救急車を呼ぶところでした。
 入浴後は疲れてTVを見る気も失せ、すぐに布団に入りました。
 が。

 布団に入ると、なんだか異常に痛みが増大!

 横になって足を伸ばすと、足に血が集中して鬼のように痛みます。
 毛布を足の下に挟んで、ちょっと足を持ち上げて眠ろうと試みたのですが、3分も居眠りすると猛烈に痛み出して目が覚めます。
 私の場合、どうやら最初のギプス固定があまり良くなかったみたいで、普通より締め付けが厳しかったらしいです。
 また、入浴したことで血行が良くなり、足の腫れを増大させたようです。

 結局、夫が帰ってくるまでの数日間、ほとんど一睡もできませんでした。
 うとうとと居眠りしては痛みで飛び起きること数十回…
 ひたすら”早く良くなってバイクに乗る!早く良くなってバイクに乗る!”と唱えながら長い夜を過ごしました。
 次に骨折して夜を迎えるときは、数日間風呂をやめようと思います。

その3:でも仕事には行く

 なにせ、転職したばかりの頃だったので、長々と休むわけにはいきません。
 通院のために二日ほど休みましたが、あとはちゃんと仕事に行きました。
 もちろん、自分で運転して出勤しました。
 骨折が左足で良かった!愛車はCVTだったので、自力で運転できたからです。

 でも、椅子に座ると足に血が集中して、絶えず油汗が吹き出てきました。
 悩んだ挙句に100円均一でゴミ箱を買い、ギプスの下に置いて足を浮かせました。
 片足を投げ出して仕事をする、超態度デカイ新入社員の誕生です。
 でも、そうでもしなくてはまともに物が考えられず、仕事にならないのです。
 出産を2度経験した今だからわかるのですが、あの痛みは尋常じゃなかった。よく声も出さずに一日中机に座っていられたものだと、我ながら思います。

 とくに大変だったのは、雨の日の移動です。
 雨が降ると、傘が差せない(松葉杖を持っているので)し、杖が滑るのでとても大変でした。
 傘くらい差さなければいいじゃん?と思いますか?
 でも、”雨の中松葉杖で傘も差さずに歩く女性”というのは、極めて周囲の同情を買うのです。
 最初は私も傘を差さずに歩こうとしたのですが、そうすると親切な通行人が
”ちょっと待って!一緒に傘に入りましょう!”
”私の車はすぐそこです!駐車場まで乗せてあげるので一緒に来て下さい!”
”私がアナタの荷物を持ちましょう!”
 等など、断っても断っても親切な通行人が現れるのです。

 でも、自分の迂闊さで人に迷惑をかけるなんてあまりにも申し訳なく、雨が降るたびに憂鬱になりました。
 誰にも見られずに車までいけるかしら。また誰かに救われたらどうしよう(そしてやっぱり毎回救われていました)と悩んだものです。
 なるべく人目につかないようにハンカチでホッカムリをして駐車場に向かったら、余計に目立って声をかけられた…なんてこともありました。
 次に骨折をして雨に降られたときは、頭の上に傘を固定して歩きたいと思います。

その4:卵が買えない!

 お料理はキッチンに椅子を置いて、片膝ついた状態でこなしました。
 でも買い物ができない。買い物かごを持てないので、一人で買い物に行けないのです。
 たいていの食材は週に一度買いこんでおくのですが、卵や牛乳のような買い置きできない食材の調達は、悩みどころでした。

 仕方が無いので、スーパーに備え付けの車椅子を利用して買い物をしたのですが、座ったままでは手に届かない食材も多くてとても困りました。  特に、卵は子供の手が届かないようにちょっと奥まった棚の上に置かれていたので、毎回困りました。
 1パック88円の激安卵(最後の1パック)を目の前でヨソの奥様にさらわれていったあの悲しみ。一生忘れられない思い出です。

その5:かゆいうま…

 いや、私にはゾンビの知り合いはいませんが。
 もとい。
 6月のじめじめした季節をギプスで過ごすと、人生未体験ゾーンの痛烈な痒み地獄に堕ちます。
 私の場合、もみじ饅頭大の擦り傷の上にギプスをはめられたので、ギプスの痒みにさらにカサブタの痒みが加わり、それはもう悶絶ものの毎日でした。

 当時は仕事の昼休みになると、12cmプラスチック定規と料理用菜ばしを握り締めてトイレにこもり、休みが終わるまでひたすらボリボリやっていたものです。
 そのとき使用した菜ばしには適当な着色を施し、可愛らしく見えるように工夫していたのですが、
 「あ、大変だね。もっと長い定規貸そうか?」と何度も声をかけられたので、トイレでの苦闘は見透かされていたものと思われます。
 今度ギプスで梅雨を迎えるときは、30cmの定規を迷わず購入したいと思います。

その6:松葉杖

 松葉杖って、思っていたよりもかなり使いこなすのが大変だ…と当初は思ったものでした。
 特に、手のひらや脇などの杖と接触する部分の皮が、ズリむけるのです。いたいよー
 応急処置として、手先の器用な夫に、杖へタオルを巻いてもらったのですが、それでも慣れて自由に歩けるまでには一週間くらいかかりました。
 特に、私が最初に使用していた杖は救急外来用であり、体に合っていなかったようです。
 皮がズリむける前に気がつくべきでした。

 その後、事故から1ヶ月ほど経過した後に、私専用の杖をこしらえてもらいました。
 これが、軽くて使いやすくて、目から鱗が100枚くらい落ちた気がします。
 小さな杖に変わってからは、階段も坂道も華麗に移動できるようになりました。
 ダンスだって踊れました。
 ”必殺!松葉杖ターン!”などという小技を披露して、職場の同僚に拍手をもらったくらいです。
 夫が意地悪を言うと杖でビシバシ攻撃し、反撃されると「ひどい!私、けが人なんだから!」と怪我をかさに来て哀れを演出。
 我ながら無敵の怪我人でした。
 今度骨を折ったときは・・・え?もういいですか?そうですか。

総論:健康第一

 身障者用の駐車スペースに、どーみても健康そのものにしか見えない若者(家族連れだっていたぞ)の車が停まっていたり、
 通路上に何気なくトラップ段ボール箱が放置されていたり、
 「身障者用」と書かれたトイレのドアが無常なまでに重かったり、
 でも顔も知らない人の思いがけない親切に鳩心が揺さぶられたり。
 骨折は、私にとってとても勉強になる体験でした。
 今後ホッカムリをした松葉杖の人を見かけたら、私も優しく傘をさしてあげようと思います。

 でも、やっぱり、健康が第一です。
 保険金なんか、あの痛みや生活の不便、失われた時間に比べたら全然割にあいません。

 みなさんは、無事故で長く楽しくバイクライフを楽しんでください。

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